ご自身は「借りたつもり」でも「贈与」と認定され、多額の納税をしなければならないというケースも考えられます。そうならないように、しっかりと対策しましょう。
開業時に資金を調達する方法のひとつに、身内から資金を提供してもらう方法があります。
銀行から調達する場合には金利がかかるところでもあり、また身内からの資金は融資審査の上でも状況により有効になる場合があります。
ただし、いくつか注意すべき点があります。
目次
身内から資金の借入を行う場合
1、借用書や金銭消費貸借契約書を作成する
「贈与」とみなされないように、きちんと「借りた」ということを書面で作成することが必要となります。
返済期間は現実的な期間にすること、金利は設定することがポイントです。
無利息の場合には、金利分に相当する金額の利益を受けたものとして贈与として課税されることもありますので、金融機関の金利と比べて著しく低いとされない程度の金利を設定するようにしましょう。
2、契約書に従い返済を行う
借入の書面とともに大切なのが、返済です。長く返済が滞ると実質は贈与ではないかとみなされてしまうこともあるため、返済は契約書通りに行う必要があります。
また、通帳を通して支払うことで返済事実の証拠を残すことも大切です。
身内から資金の贈与を受ける場合
1、暦年課税とは?
贈与税には年間110万円の基礎控除があり、1人の人が1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた金額が110万円以内であれば贈与税はかかりません。
また、贈与を受けた金額が年間110万円を超える場合には、以下の式で贈与税を計算し、翌年の2月1日から3月15日までの間に申告が必要となります。
贈与金額={(1年間に贈与された財産の合計)-110万円} × 税率 – 控除額
平成27年以降の贈与税の税率は以下の通り、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に区分されています。
「一般贈与財産」の速算表は「特例贈与財産」に該当しない場合となっており、例えば、兄弟間の贈与、夫婦間の贈与で使用します。
「特例贈与財産」の速算表は直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において、20歳以上の者(子・孫など)への贈与で使用します。例えば、祖父から孫への贈与、父から子への贈与などです。
※ただし、配偶者の父からの贈与等は該当しません。
贈与税の速算表(一般贈与財産用)
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
贈与税の速算表(特例贈与財産用)
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
2、相続時精算課税制度とは?
相続時精算課税の制度とは、事前に税務署に選択・申告することで、60歳以上の父母・祖父母から2,500万円の資金を贈与税無税で受け取ることができる制度です。この制度は、その名のとおり贈与した人(父母・祖父母)の相続時にこの贈与資金を相続財産に加算して相続税を計算するものです。相続税がかからないご家庭では、実質、非課税で贈与を実行することができ、世代間の資金移動が生前に可能となります。しかし、相続税が発生するご家庭にとっては贈与した金額を相続時に足し戻すため、相続財産を減らすことにはつながりません。
また、いったん相続時精算課税を選択すると、相続が発生するまでこの制度が適用されることとなり、暦年課税の方法に戻すことはできないので、この制度を使って開業資金を調達しようとする場合、その効果やデメリットをよく検討してから実行することが大切です。
まとめ
身内から資金を借入れる場合も、贈与を受ける場合もそれぞれ注意点があることをご理解いただけましたでしょうか。しかし、注意点さえ気を付ければ、開業資金の調達手段のひとつとして身内からの資金調達は有効な手段です。資金提供を受けられるようでしたら、ぜひとも活用したいものですね。