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事例にみる開業初年度の経営相談

開業初年度には、患者数や収支が安定していないクリニックが多く、診療に集中したい気持ちと同時に、経営者としての責任も背負うため、不安な声が多く寄せられます。
また、感覚的に患者数が増えてきても他のクリニックと比較するとどうか、などといった相談も多く寄せられます。勿論、経営者としては初めて従業員の労務対応も経験することになりますが、本記事では、クリニック開業初年度の決算時期に多い経営相談に絞って取り上げ、経営改善につながる考え方や具体的なアプローチを当社の事例を交えて解説します。
経営で不安を感じた際には、近くの税務担当者や専門家に相談するなどして、安心したお気持ちで年末を過ごして頂きたいと願っています。

開業初年度に多いクリニックの経営相談

開業初年度は、ドクターは自院の経営と診療に夢中で、他院に目を配ることはないでしょうが、決算時期に至ると初年度の経営成績が数字として表れますので、「同じ診療科の他クリニックはどのくらい患者が来ているのか」といった質問が多く寄せられます。他院を知って安心したいという気持ちが起きるようです。
このような相談は、開業初年度のクリニックの状況によって概ね次の二つに大別されます。

  • 初年度で患者数が伸び悩んでいるクリニック
  • ある程度、患者数が増えて安定しているクリニック

初年度で患者数が伸び悩んでいるクリニックの不安

開業して間もない段階では、採算ラインに到達するまでの期間を正確に予測することは容易ではありません。診療体制を整えながら集患を進める過程で、どうしても患者数や利益額が想定を下回ることがあります。
このようなクリニックでは、「当初の事業計画値より下回っている、戦略を見直したい」、あるいは「採算ラインまでどれだけ期間が掛かるであろうか」といったドクターの悩みから平均的なラインを知りたい、とのドクターの相談があります。自院の数字だけを見ていると良し悪しの判断が難しいためです。
このような状況で必要なのは、焦って大規模な投資を行うのではなく、まずは現状のデータを丁寧に確認し、何が要因になっているかを把握することです。新患数や再診率、単価の推移などを分解して検証すると、改善の糸口が見えやすくなります。
一方で、初年度に伸び悩んでいても、それが必ずしも失敗を意味するわけではありません。多くの場合、地域住民に認知されるまで一定の時間がかかるため、数か月から1年程度は基盤を固める準備期間と考えるべきです。マーケティングの工夫や地域医療との連携を強化すれば、次年度以降に安定して成長する可能性が十分にあります。大切なのは、焦らずにデータを基に改善策を検討し、実行に移す姿勢です。

ある程度、患者数が増えて安定しているクリニックの悩み

一方で、開業して1年が経過する頃には、一定数の患者が継続的に来院し、診療が安定してくるクリニックもあります。その段階でよくある相談が、①他院と比較して、自院が平均値以上か、どうか知りたい、②今後の自院来院患者数の目途を付けたい、という内容ですが、比較的経営に余裕が出てきたドクターに多く見られます。
経営の安定を感じていても、今後の患者数がどう推移していくかは誰もが気になるところですが、その際に役立つのが、リピート率や紹介患者の割合といった指標です。単なる患者数の増減だけではなく、どのような層の患者が定着しているかを把握することで、将来の見通しをより正確に描くことができます。安定している時期こそ、油断せずに次の成長ステップを考えることが重要となります。広告投資の適正化や診療内容の拡充を検討することで、さらなる成長基盤を築くことが可能になるからです。

当社の経営サポート

整理しますと、上記の2つのケースに共通しているのは、特に開業初年度において「同一診療科のクリニックと比較して、自院の立ち位置を知りたい」との要望が多い点です。
その一方、現状ではクリニックの経営データは、少なからず全国的な統計や地域別のデータが公開されているものの、一日当たり患者数や診療単価などの本質的なデータの追及は、困難な状況です。
当社は、主に1都3県にまたがって、約600以上のクリニックの税務顧問を担当しておりますので、診療科別クリニックの開業時点から初年度の推移、過去の実績や直近のデータまで収集が可能な体制を有しています。
これらのデータから、同一診療科で、地域や患者需要構造が比較的近いクリニックのデータ、及び入手可能な基本データと併せてベンチマークし、そこからクリニックの強み・弱みを整理して分析のアウトラインをまとめています。
勿論、これらは税務顧問の範囲内として行うため、別途コンサル費用を頂くことはありません。そのため、作業量を抑えて簡易的な形式とはなりますが、ニーズが高いクリニックのご要望に応えるようにしています。
ドクターには、数字の裏側にある経営戦略や地域性のポイントを理解して頂き、クリニック経営の改善点を冷静に見極めて頂きたいと願っています。

収入を増やしたい、どうすればいい?

経営相談の中で特に多いのが「収入を増やすための具体策を知りたい」という声で、開業初年度のドクターからよく聞きます。
その背景には、「開業資金の返済を順調に済ませたい」などの切実な思いなどがあるからでしょうが、収入の成り立ちを考えて頂ければ、ドクターが何に注力すれば良いか、理解頂けると思います。収入は診療単価、患者数、診療日数の3つの要素で構成されます。どれを強化するかでアプローチは変わりますので、いずれも注意点を踏まえた上で実行することが欠かせません。短期的な成果だけに目を向けると、診療単価の上昇による厚生局指導のリスクなど、思わぬ問題に発展する可能性があり、注意が必要です。

診療単価のアップにより収入を伸ばす

保険診療で、患者一人一日当たりの診療単価を上げる方法について、ご存知の通り、必要度が低い検査などを繰り返して単価アップを図るのは不適切であり、到底容認されるものではありません。但し、もし近隣のクリニックに比べて、余りにも単価が低いのであれば、それは改善すべき点です。例えば、施設基準の届出漏れ、診療報酬の請求漏れなどの原因が考えられますので、一度チェックしてみるのも良いでしょう。
尚、診療単価のアップは、結果的にクリニックの平均レセプト点数を高めることになり、過度な加算は、厚生局の指導対象となるリスクがありますので、自院と公表されている都道府県別の平均レセプト点数と比較するなど慎重な判断が求められます。

患者数を増やして、収入を伸ばす

患者には現在通院中の再診患者と、新患(新来初診患者を指します)の2種類が存在します。
このうち、ターゲットとなるのは「新患」の獲得になるでしょう。その理由は、新患で来院した患者は、治療を終えた後、次は再来初診患者となり、初診料を頂ける患者として期待できるからです。
また、「再診患者」の月内の再診回数を増やすと、患者数のアップ=収入アップにつながり、一見良さそうに見えます。しかしながら、この方法は前述の診療単価のアップと同様、クリニックの平均レセプト点数を押し上げる要因になりますので、慎重な対応が必要になります。

診療日数を増やして収入を確保する

診療日数を増やした場合には、当然ですが収入はアップします。
然しながら、クリニックスタッフの人員体制、診療効率への影響や、収入に対して経費率が高まって利益率が低下するなど、思わぬ副作用が発生する可能性があります。スタッフのワークライフバランスを見ながら慎重に検討すべきでしょう。
この他、診療日に関して、最近多く見られるのが、休診日の移動です。特異なケースとして小児メインのクリニックでは、金曜日の午後は母親が仕事で子供を連れて来られないとして、金曜日を休診日とし、代わりに土曜日を診療日にした結果、以前より患者数が増加し、収入が伸びた、との報告もなされています。診療科と地域特性の両面から、情報収集のアンテナを張って、患者の動きを予想した典型的な戦略事例と言えます。 

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集患対策を知りたい、いい知恵はないか

前述の収入増加の基本を理解した上で、次に求められるのは具体的な集患対策です。
開業当初、ドクターは診療への思いがひと際熱く、「真面目にやっていたら患者は来る筈、きっと患者が見つけてくれる」との自信が強く感じられます。
ですが、初年度末頃には「患者を増やす為には、積極的な患者呼び込みと、自己発信の大切さ」を痛感される先生が大多数となります。
それ故、慎重な対応をしつつ再診患者を増やす工夫や、新患(新来初診患者)を呼び込む仕組み作り、その双方を組み合わせて持続的な成長を目指す必要があります。重要なのは、単発的な対策ではなく、継続的に効果を測定しながら改善を積み重ねることです。患者目線で利便性や安心感を高める工夫をすることで、結果的に患者から信頼を得てリピートにつながります。

再診患者を増やす具体策

再診患者を増やすためには、診療の質だけでなく、通いやすさや予約の取りやすさが大切となります。例えば24時間対応の予約システムを導入することで、日中や仕事から帰宅後のオフタイムに予約でき、またクリニックでの待ち時間を減らすこともできて、患者の満足度向上につながります。更に定期的なフォローを行えば、患者は安心して継続的に来院しやすくなるでしょう。

新患(新来初診患者)の増加対策

新患を増やすには、的確な分析と投資が欠かせません。来院経路や年齢層などを把握し、どの施策が有効かを判断することが成果につながります。
ホームページの強化やSEO・MEO対策も欠かせない手段です。患者が検索したときに自院の情報が適切に表示されることは、信頼感を高める第一歩となります。オンライン予約やWEB問診票を取り入れると、利便性が向上し、初診患者のハードルを下げられます。さらに、WEB広告やSNSの活用で幅広い層にアプローチし、地域に根ざした宣伝広告で信頼を築くことも効果的です。また、病診連携や診診連携を意識することで、紹介患者の獲得につながり、安定した患者数増加を見込むことができます。
集患対策については、当サイトで別記事を用意しています。併せてご覧下さい。 
「クリニックはマーケティングが必須!集患のポイントを解説」
「クリニックに有効な集患方法とは?オフラインマーケティングの活用」

厚生局の指導について

開業初年度の多くの院長は、事前に情報を得て「厚生局の指導=危険、要注意」というように捉えており、”指導”という単語は大きな不安要素となっています。
そのため、当社では、先ずは院長の不安解消のために、厚労省の基準にさかのぼって以下の規定の概要を確認頂くことから始めています。

  • 新規個別指導
  • 集団的個別指導
  • 個別指導

勿論、指導は保険診療での平均レセプト点数が高すぎたりした場合や、不正請求を防ぐための予防措置でもありますから、開業初年度の院長には、クリニック経営を健全に続けるために、指導の仕組みを正しく認識して頂くことで、初年度以降もリマインド効果が期待できると思われます。

経営相談への対応(当社の方針)

開業初年度に直面する課題は、地域性、診療科や各クリニック院長の捉え方によって大きく異なります。また、同じような課題に見えても、解決方法はそれぞれ異なるのが現実ですが、経営相談においては、まず相談内容の本質を見極めることが第一です。例えば患者数が伸び悩んでいる原因は宣伝不足なのか、あるいは診療体制にあるのか、それとも立地要因なのかを正しく把握することが出発点となります。
当社が心がけているのは、ドクターに対して経営数字の裏にある背景を分析し、次年度以降の経営者の判断の基になる具体策を提案することです。開業初年度は不安や疑問が次々に生まれる時期ですが、その一つひとつを解消することで安定した経営に近づくことでしょう。当社の役割は、相談を通じて次年度以降への道筋を描き、安心して診療に専念できる環境を整えることと考えています。

執筆者 / 三田村 清幸

税理士法人TOTAL 医業経営コンサルタント
岩手大学工学部卒業

理数系の教育分野で海外勤務後、我が国初の医業経営コンサルティング専門企業の設立に参加。海外・国内の病院コンサル事業に従事、同社は国内最大手企業に成長。役員を経て、2020年に税理士法人TOTAL入社

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