クリニック開業のススメ

クリニックの開業の成功に向けた現場で役立つ実践的な情報を提供します。

  1. ホーム
  2. クリニック開業のススメ
  3. 開業
  4. クリニック開業における坪単価と平均坪単価の実態

クリニック開業における坪単価と平均坪単価の実態

クリニックの開業を検討されている医師の方々にとって、内装工事費用の想定は融資向けの事業計画を作成する際にも重要な点です。適切な予算設定は、開業後の借入金の返済額に直接関わってくるため、安定した経営につながる重要な要素となります。本記事では、クリニックの坪単価と平均坪単価の実態について詳しく解説し、効率的な資金運用のヒントをお伝えさせて頂きます。

クリニック内装費用の坪単価と費用相場

坪単価の基本概念

クリニックの内装工事を計画する際、最初に理解すべき概念が「坪単価」です。坪単価とは、1坪(約3.3平方メートル)あたりの工事費用を指します。一般的なクリニックの内装工事における坪単価は、税抜き50万円~90万円程度が目安となります。ネット上では30万円からを目安として伝えているサイトも見受けられますが、居ぬき物件にクロスの張替えなど必要最低限の改修を地場の工務店などに依頼するケースを除き、30万円代はほどんどありません。特に最近の傾向として、資材や人件費の高騰により坪単価の上場傾向が顕著となっています。

さらに、デザインこだわった高級感や特殊な機能性を重視した内装では、坪単価が上昇する要因となります。また、内装を手掛ける会社の価格設定や工期の長さによっても費用が変動することになるため、単純に坪単価だけで判断するのではなく、総合的な視点で内装費用を考える必要があるのです。

診療科別の平均坪単価

まず、診療科によって必要な設備や空間の要件が異なるため、平均坪単価にも違いが生じます。例えば、高度な医療機器を多く必要とする診療科では、それらの設置スペースや電気設備の増強が必要となり、坪単価が高くなる傾向があります。

一般内科や小児科などの比較的シンプルな設備で開業可能な診療科では、坪単価は平均的な範囲内に収まることが多い一方で、例えば眼科など、特殊な検査機器や治療設備を要する診療科では、坪単価が平均を上回る可能性が強くなります。

内科クリニックの場合では、50~90万程度の坪単価が最近では一般的な範囲です。対して、MRIやCTなどの大型医療機器を導入する脳神経外科などでは、さらに高い坪単価になることも珍しくありません。

診療科別に必要な面積と総費用の目安

主要診療科の必要面積

クリニックの必要面積は、診療科によって大きく異なります。これは、各診療科で必要とされる検査機器や治療設備、また患者の流れなどが異なるためです。主要な診療科の一般的な必要面積として、内科は30~50坪、小児科は30~45坪、耳鼻咽喉科は30~45坪、眼科は30~60坪、整形外科は60~70坪、皮膚科は25~40坪程度が目安となります。

これらの数字はあくまで目安であり、実際の必要面積は開業する地域や想定する患者数、提供したい医療サービスの範囲によって変動することになります。例えば、リハビリテーションに力を入れる整形外科クリニックでは、施設基準の規定をクリアするため+15坪程度のより広いスペースが必要となるでしょう。

面積と坪単価から見る総費用の試算

必要面積と坪単価が分かれば、おおよその内装工事費用を試算することができます。例えば、40坪の内科クリニックを開業する場合、坪単価を60万円と仮定すると、内装工事費用は2,400万円(税抜)となります。

ただし、内科より倍以上広い面積となりやすい整形外科などのクリニックの場合には、坪単価は想定よりも下がることもあります。

それ以外にも、これらの試算にはいくつかの注意点もあります。まず、坪単価に含まれる項目が業者によって異なる場合があるため、見積もりの詳細を確認する必要があります。また、当然ながら内装費に他の設備費用は含まれておらず、医療機器や家具、家電などの費用は別途考慮する必要もあります。

さらに、物件の状態や立地によっても総費用は変動します。例えば、都心部の新築物件では坪単価が高くなる傾向にありますが、居抜き物件や郊外のテナントなどでは、大幅にコストを抑えられる可能性があります。

初めての方もお気軽にご相談ください

相談予約はこちら

物件の種類による坪単価の違い

居抜き物件の特徴と坪単価

居抜き物件とは、前のテナントが使用していた内装や設備をそのまま引き継ぐ物件のことです。クリニック開業において、居抜き物件を選択することで大幅にコストは抑えられます。

居抜き物件の坪単価は、一般的に10万円から30万円程度と言われています。これは新築物件と比較すると半分以下の金額です。特に、前テナントが同じ診療科のクリニックだった場合、多くの設備をそのまま利用できるため、さらに費用を抑えられることになります。

ただし、居抜き物件にも注意点があります。前テナントの内装が自身のクリニックのコンセプトと合わない場合や、設備が古くて大規模な改修が必要な場合は、結果的に費用が高くなってしまうかもしれません。特に水回りや空調、CTがある際の防護工事に問題無いかなどは、開業進行時に問題が発覚すると、スケジュール変更も余儀なくされることになります。そのため居ぬきで、費用を最小限に抑えたいからと特に医療機関の施工実績の少ない内装業者へ依頼する場合には、事前によく確認しておくことが開業後のトラブル回避のために必要になってきます。

その他にも、既存のレイアウトやデザインが時代に即した患者向けの内容としてのズレが顕著なのであれば、さらに後から予期せぬ競合クリニックが近隣にオープンする余地を与えることにもなりかねません。

そのため現状の設計・デザインが、患者の居心地の良さやスタッフの業務効率の観点から動線を考えたときに、このまま少なくとも10年以上継続するクリニックの内装として妥当な範囲であるか、考慮に入れたうえで判断する必要があるでしょう。

また、居ぬきでもないのに、安すぎる業者にも気を付けて下さい。安すぎる場合は、たいてい医療施設の施工経験のない業者などのことが多く、例えば夏場に部屋が熱くなり過ぎて後から数百万をかけて空調設備を設置することになったり、耐久性に問題のある「手抜き工事」になっているかもしれません。その他にもクリニックのコンセプトからくるデザイン性などを放棄する場合には、競合と比べて開業後の集患(売上)に影響が出るなど、コストの面だけでないデメリットもあります。

坪単価を抑えるためのその他アプローチ

早期の専門家相談による効果

クリニック開業における坪単価を抑えるためには、計画の早い段階から医療開業実績の豊富な専門家に相談することも重要なポイントです。医療施設の設計や施工に精通した建築士や内装業者は、効率的な空間利用や適切な材料選択など、コスト面でも優れたアドバイスを提供してくれることでしょう。

その際には、内装のデザイン等にこだわる場合と、可能な限り安くしたい場合の費用感とそれぞれのメリット・デメリットを公正に説明してくれるかどうかを確認してみてください。

これにより例えば、50坪のクリニックを開業する場合、早期の専門家相談により10%のコスト削減が実現できれば、もともと坪単価60万円だったとして300万円の節約になります。この金額は、医療機器の購入や運転資金に充てることができ、開業後の経営の安定につながります。

ところで、内装工事の「設計」と「施工」を業者別に分けて依頼(分離発注方式)するのか、それとも同じ業者で依頼(一括発注方式)するのかは、メリットとデメリットをめぐって意見が分かれるところです。

ここで詳しくは触れませんが、どちらが良いか判断に迷うところです。以下にそれぞれのポイントを簡潔にまとめましたので、参考にしてください。

方式選択のポイント

検討事項分離発注方式が向く場合一括発注方式が向く場合
デザイン・こだわり最優先する場合ある程度デザインを重視しつつ、
効率も重視する場合
工期時間に余裕がある場合開業を急ぐ場合、工期短縮を
最優先する場合
予算厳格なコスト管理のために
価格の妥当性を検証したい場合
コスト削減と予算内での実現を
重視する場合
発注者の負担負担が増えても品質やデザインを
優先したい場合
手間を減らしたい場合、
窓口を一本化したい
場合
整理厳格な第三者監理を受けたい場合スピード一貫性を重視する場合
(責任の所在も明確)

工期の適切な設定

工期の適切な設定と管理も、坪単価を抑える上で重要な要素です。当然工期が延びると人件費が増加し、結果として坪単価の上昇につながります。

工期を適切に管理するためには、やはり十分な準備期間を設けることが重要で、時間がなくて準備不足、確認不足のままで工事を始めると、後々の変更や手戻りの原因となります。

なるべく工事の遅延を防ぐためには、理想的には余裕を持った開業計画と、実績の豊富で信頼できる業者の選定がポイントとなります。

坪単価の正しい理解と業者選定のポイント

業者による坪単価計算の違いを把握する

クリニック開業の際、複数の業者から見積もりを取ることは一般的ですが、各業者の提示する坪単価を単純に比較するのは危険です。なぜなら、坪単価の計算方法や含まれる項目が業者によって異なる場合があるからです。

例えば、ある業者は内装工事費のみを坪単価として提示し、別の業者は設計費や設備費も含めた総工事費を坪単価として提示することがあります。このような違いを理解せずに比較すると、誤った判断につながるため、坪単価に含まれる項目の詳細、別途費用として計上されている項目等、同じ基準で比較しなくてはいけません。少なくとも、どの項目の金額が、なぜ違っているのかは確認してみてください。

総合的な視点からの業者選定

クリニック開業における業者選定は、単に坪単価の安さだけで判断するべきではありません。総合的な視点で業者を評価することが、結果的に最適な選択につながります。

業者を選定する際は、実績と経験、デザイン力、コミュニケーション能力、アフターサポート、可能な限りその業者の財務状況までも考慮することが重要です。医療機関、特にクリニックの施工経験が豊富な業者は、効率的な空間設計や適切な材料選択などのノウハウを持っています。患者に安心感を与え、スタッフの作業効率を高める空間設計ができる業者を選ぶことで、長期的な運営効率の向上につながります。

また、コミュニケーション能力の高い業者を選ぶことで、要望を的確に理解し、適切な提案を受けることができます。これにより、工事中の追加・変更を最小限に抑え、結果的にコストを抑えられることもあります。

さらには、アフターサポートの充実も重要な選定基準です。開業後のメンテナンスやトラブル対応が迅速かつ適切に行われることで、クリニックの安定運営につながります。業者の財務状況も確認し、工事の途中で倒産するリスクを回避することも大切です。

例えば、坪単価が若干高くても、豊富な経験を持ち、充実したアフターサポートを提供する業者を選ぶことで、中長期的な安心感を確保することにもなります。

コストの面からの坪単価は確かに重要な要素ですが、それだけにとらわれず、クリニックの長期的な成功を見据えた選択をしましょう。適切な業者選定と綿密な計画により、理想のクリニックを適正なコストで実現することができるはずです。

以上のように、クリニック開業における坪単価と平均坪単価の実態を正しく理解し、総合的な判断の中でアプローチすることが重要です。早期からの専門家相談、適切な工期管理、コストパフォーマンスを考慮した設備選択、そして総合的な視点での業者選定を心がけることで、理想のクリニックを適正な費用で開業することができるはずです。

この記事が、少しでも皆様のクリニック開業の成功への一助となれば幸いです。

執筆者 / 松崎 史朗

税理士法人TOTAL 開業支援部部長
宅地建物取引士合格 FP2級技能士 証券外務員一種 明治大学卒業

国際証券(現在の三菱UFJモルガンスタンレー証券)でリテール営業を経験後、外資系メーカーなどにも勤務。個人事業4年間を経て平成30年より税理士法人TOTAL再入社

専門家がお届けする開業情報!

開業成功の秘訣を無料公開中!

医療専門チームが対応します!

相談予約はこちら

関連記事

支援イメージ

TOTAL
クリニック開業支援
サービス

安心の開業サポート
開業について、困ったことや課題がありましたらお手伝いします!

支援イメージ
  1. 今すぐ面談予約
  2. 0120966390