2020年2月28日 「医院・クリニックの内覧会当日、注意するべきポイントとは?」を公開しました!

医院・クリニックの給与・賃金規定の決め方

給与は従業員の生活の糧であると同時に、クリニックにとっては人件費という名称の「固定費」となります。

そして、給与は退職理由の上位に挙げられるほど経営者側と従業員とでは考え方のギャップが生じやすいものです。

最終的には院長先生が納得できる金額で給与額を決定しますが、あらゆる場面を事前に想定し、計画的に「固定費」を見積もっておくことが重要です。

 

1.就業時間を決める

クリニックの診療時間と就業時間(労働時間)はイコールではありません。診療開始前のミーティングや掃除等の準備、診療後のお金の締め作業、それに後片付けも労働時間となり給与を支払う必要が生じます。

クリニックは、その日の患者さんの動向で労働時間が左右されやすくなります。 診療時間と就業時間を同じ時間帯で設定してしまうと、毎日のように時間外労働が発生することになり、残業代が膨らんでいきます。

その結果、人件費としての固定費が増えてしまうことになります。

時間外労働については、原則として1日8時間を超えた場合に1.25倍の割増賃金の支払い義務が生じます。

  • 【例1】月給30万円の看護師(月間所定労働時間160時間の場合)
    1時間あたりの単価  通常時1,875円→残業時2,344円
  • (例)月給18万円の受付事務(月間所定労働時間160時間の場合)
    1時間あたりの単価  通常時1,125円→残業時1,407円

もともとの診療時間の設定が長い場合には、残業する従業員を増やさないために以下のような取り組みも検討してみましょう。

  • 早番・遅番制度の導入
  • 1日8時間勤務の正社員のみならず、半日勤務のパート採用

 

2.職種と地域の相場で給与を考える

給与を決める際の始めのポイントは職種による相場です。

特にクリニック開業の場合には経験者を中途採用する場合が多いため、職員は前職との給与の比較をもとに考えます。

しかし、病院勤務とクリニック勤務ではその内容に大きな違いが出てきます。 特に看護師は夜勤がなくなることで労働時間が短縮されますが、夜勤手当がつかないことで手取りを見た時にギャップを感じやすくなります。

また、看護師と事務職では年収に1.5倍もの差が生じてきます。 職種、業務内容、労働時間をわかりやすく示し、それに見合った給与額であることをきちんと説明できるようにしておくことが大事です。また、どの職種でも院内の清掃等の庶務も業務に含まれることを強調しておきましょう。

そして、勤務地によっても給与に差は生じます。駅から離れた場所にあるクリニックの場合、近隣にお住いの方を採用するのであれば通常の給与で良いのですが、他地域へ募集をかける際には、年収をある程度は高めにしておかないとなかなか応募につながりません。クリニックを開業される地域の求人を見ることでおおよその相場が分かります

 

3.基本給以外の手当を検討する

基本給以外に、資格や役職、個々の経験や能力を評価して手当という形で支給することができます。事前に看護師資格には○○円、医療事務資格には○○円と一定の基準を定めておいた方が、院長先生も職員もわかりやすくて良いでしょう。

ただし、あまりにも手当をたくさんつけると、かえって煩雑になってしまうため、 資格手当、職務手当、職能手当などの3つ程度に抑えておくのがおすすめです。

また、クリニックが開業したばかりのときは職員の能力に期待をする形で給料を決めることになりますので、期待以上の働きをしてくれた職員には、昇給の時にきちんと評価をしてあげることが大事です。

 

4.通勤費も人件費の一部

通勤費については、支払いを義務とする法律の定めはありません。だからと言って、自分でお金を払って通勤してくださいとなると、誰も入職しなくなってしまいます。事業所で規定を作り、それにしたがって支給することをおすすめします。

定期券は1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月単位で購入することができますので、定期での購入を前提としてください。また、自宅から最寄り駅までの距離が遠い場合はバスの使用を希望される方がいたり、車通勤を希望される方がいたりします。

それぞれの交通手段においては、職員の安全を第一に考え、合理的で経済的な方法を定める必要があります。また、通勤費は人件費の一部ともなりますので、遠方から通う職員を採用予定であるなら、通勤費に1ヶ月あたりの上限を定めておくのもよいでしょう。

 

一度決めた給与を下げることは難しい

給与の決め方はクリニックによって様々です。

しかし、どのような給与・賃金規定を作るにしても、「一度決めた給与を下げることは相当な理由がない限り難しい」ということは覚えておいて下さい。

なぜなら、給与はその人の生活基盤を支えるものとして、または勤労意欲にも密接に関わっているからです。

給与を下げることによるデメリットは多く想定されます。良い雰囲気のクリニックを演出するためにも、給与を決めるときは慎重に、

  • その給与分の仕事を期待しているか
  • 給与は世間と比べて適正か

という点も踏まえて総合的に決定して下さい。